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AMH検査(卵巣予備能検査)とは、どんな検査?

2022.04.08

2022年4月から保険診療で不妊治療を受けられるようになり、妊娠を希望する方の選択肢が広がりました。不妊治療を考える場合、卵巣に卵子がどのくらい残っているか(卵巣予備能)が大きな判断材料の1つになります。今回は、この卵巣予備能を知るためのAMH検査(卵巣予備能検査)について、詳しく解説します。

 

AMHって何のこと?

子宮の両側に1つずつ存在する卵巣の中には、卵子のもとになる原始卵胞(げんしらんほう)が多数存在しています。卵胞とは、卵子とそれを包み込む袋状の細胞の集まりのことです。

生まれる前の胎児の卵巣内には一生分の原始卵胞が存在しています。生まれた後は、原始卵胞は数が減っていき、途中で増えることはありません。誕生時にはおよそ200万個ある原始卵胞は、思春期以降になると30~50万個に減少し、37歳頃までに2万個まで減少するといわれています。

原始卵胞は、前胞状卵胞、胞状卵胞を経て、成熟卵胞へと発育し、卵胞の中に存在する卵子が卵巣の外に排出されます(排卵)。たくさんの卵胞が同時に発育するものの、排卵に至るのは1個だけであり、1回の排卵で約1,000個の卵胞が減少するといわれています。卵胞の数は月経のたびに少なくなり、51歳頃に1,000個程度になり閉経を迎えます(※1)

AMHは、前胞状卵胞から胞状卵胞に発育する段階の卵胞から多く分泌されるホルモンです。正式な名称は、抗ミュラー管ホルモン(Anti-Müllerian Hormone)といいます。血液中に存在するAMHの量は発育中の卵胞の数を反映すると考えられるため、AMHを測定すれば、卵巣予備能(卵巣内に残っている卵子の数)を知るのに役立ちます。

 

AMH検査(卵巣予備能検査)で分かることとは?

AMH検査(卵巣予備能検査)とは、血液中のAMHの濃度を調べる検査です。AMH値は月経周期による変動がほとんどないため、いつでも検査できます。 また、低用量ピルを内服中の場合、実際の数値より低く測定される可能性があるため、正しく知るためにはピルを1ヵ月以上休薬した後に検査をお勧めいたします。

AMH値は思春期をピークとして、加齢に伴い徐々に低下していきます。AMH値は卵巣内に残っている卵子の数を示しており、AMH値が高ければ卵子数が多いことを意味します。年齢が若くてもAMH値が低い場合は、それだけ卵巣内の卵子の数が減っていると考えられ、早期閉経を迎える可能性があります。妊娠を希望する場合、AMH値は不妊治療へのステップアップを検討する判断材料になります。

不妊治療で体外受精を行う際、卵子を採取する処置を行いますが、AMH値は採れる卵子の数とも相関しています。そのため、AMH値は体外受精の際に行う卵巣刺激法(排卵誘発剤を使って複数の卵子を得る方法)を選択するかどうかの判断材料にもなります。

また、AMH検査は多嚢胞性卵巣症候群(卵胞の成長が途中で止まり、排卵しにくくなる病気)を見つけるのにも役立ちます。AMH値が高すぎる場合は多嚢胞性卵巣症候群の可能性があり、不妊治療の際に排卵誘発剤を使用すると卵巣が腫れることがあるため、注意が必要です。

 

AMH検査(卵巣予備能検査)を正しく役立てるために

AMH値は、血糖値や血圧のように「正常値」が存在するわけではありません。同じ年齢の女性における中央値(リンク入れる。名駅対応)と比べて高いか低いかで、卵巣予備能を判定します。

AMH値はあくまでも卵巣内に残っている卵子の数を知るための指標であり、妊娠する可能性と直接的な関連はありません。妊娠のしやすさは卵子の質と関連しますが、AMH値では卵子の質までは分かりません(※2)。AMH値が低い(=卵子の数が少ない)ということは、妊娠率が低いということではなく、妊娠できる期間が限られてくるということを意味します。逆に、AMH値が高い(=卵子の数が多い)からといって、必ず妊娠できるというわけではないことにも注意が必要です。

社会で活躍する女性が増え、出産年齢は上昇傾向にあります。一方、年齢を重ねるごとに妊娠率は低下し、高齢出産では合併症などのリスクも高まります。「いつかは妊娠を」と漠然と考えていても、卵巣予備能が低下して、妊娠できるタイムリミットが短くなっていたということもありえます。働く女性にとって、妊娠適齢期に自分の思うように妊娠・出産するのが難しい現状がありますが、納得のいく決断をするためにも、「いまの自分の状態」や「いつまで妊娠できるのか」を知っておくことは重要です。AMH検査は、それを知るために役立つ検査です。

「知っておけばよかった」ということがないように、また、ライフプランを考えるために、検査を活用していただければと思います。

AMH検査は、不妊治療の一環として受ける場合は保険診療で受けることができ、そのほかの場合は、自費で検査を受けることが可能です。当クリニックでも、各種健康診断・人間ドックのオプションとして受診いただけます。

■卵巣予備能検査(AMH)■

※AMH検査は卵巣予備能の目安となります。妊娠を保証するものではありません。

 

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参考文献
※1 Faddy MJ, et al.: Hum Reprod 1992; 7: 1342-1346.
※2 苛原 稔ら, 日産婦誌 2017; 69: 1721.

 

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記事監修者:
吉形 玲美(浜松町ハマサイトクリニック 婦人科医師 医学博士)

プロフィール:
東京女子医科大学医学部卒業後、同大学産婦人科学教室入局、准講師を経て、現在非常勤講師に。2010年7月より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科診療のほか、多施設で女性予防医療研究に従事している。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、日本女性医学学会専門医ほか。

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