胃がんの初期症状とは?早期発見のために知っておきたい胃がんの症状、原因、検査
日本人がかかりやすいがんの1つである胃がん。以前と比べてがん検診を受ける人が増え、胃がんの原因となるピロリ菌の検査・除菌治療を受ける人も増加してきたことなどから、胃がんの死亡数は減少傾向にあります。今回は、早期発見・早期治療につなげるために知っておきたい胃がんの症状、原因、検査などについて解説します。
胃がんとは、どんな病気?
胃は、食道と十二指腸の間に位置する袋状の臓器で、胃の壁は内側から粘膜、筋層、漿(しょう)膜の順にいくつかの層が重なってできています。胃の主な役割は、食道からきた食べ物をため、たんぱく質や脂肪などを消化し、少しずつ腸へと送り出すことです。胃の粘膜からは消化酵素や胃酸を含む胃液が分泌されており、食べ物は胃液と混ざり合うことで消化されます。
胃がんは、胃の内側をおおう粘膜の細胞ががん化したものです。がん細胞が増殖するにつれ、徐々に粘膜から筋層、漿膜へと外側に深く広がっていきます。がん細胞が漿膜の外側まで達すると、胃の近くにある大腸や膵臓、横隔膜、肝臓などの臓器にも直接がんが広がっていきます。
胃がんの中には、胃の壁にしみこんでいくように広がり、胃壁が硬く厚くなる「スキルス胃がん」というタイプがあります。一般的に、胃がんでは胃壁に隆起や潰瘍が見られるため、比較的初期の段階でも内視鏡検査などで発見できます。しかし、スキルス胃がんでは目立った隆起や潰瘍がなく、正常な組織との境界が不明瞭なため、発見が困難なことがあります。進行が早いことから、症状が現れて見つかったときには、すでに進行していることも少なくありません。
胃がんにかかりやすい人の特徴とは
胃がんは日本人に多いがんの1つであり、罹患数(がんと新たに診断される人の数)は大腸がん、肺がんに続く第3位です。女性よりも男性に多く、男性では10人に1人、女性では21人に1人の確率で胃がんにかかると推定されています[※1]。
胃がんの発症は50歳を過ぎると徐々に増加し、80歳代で罹患率が最も高くなります。人口の高齢化の影響で罹患数は年々増えていますが、早期発見・早期治療が可能となってきていることから、胃がんで死亡する人の数は減少傾向にあります[※2]。
胃がんの発症リスクを高める大きな要因の1つが、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染です。ピロリ菌が胃の粘膜に棲みつくと、粘膜に慢性的な炎症が起こります。胃がんが発生するのはピロリ菌感染によって炎症が起こった胃粘膜からがほとんどであり、炎症が長期間続いて粘膜が萎縮した状態(萎縮性胃炎)になると、胃がんの発症リスクはより高くなります[※3]。
そのほかに、喫煙や多量の塩分摂取、多量の飲酒が胃がんの発症リスクを高めると考えられています。
胃がんに特有の初期症状はある?
胃がんの代表的な症状は、胃の痛み、胃の不快感・違和感、おなかの張り、げっぷ・胸やけ、吐き気、食欲不振などです。また、がんから出血することで貧血や血便(便の色が黒くなる)が現れることもあります。ただ、こうした症状は胃炎や胃潰瘍などの胃がん以外の病気でも起こりうる症状です。
胃がんの初期症状として特有な症状はなく、かなり進行しても自覚症状がほとんど現れないこともあります。
自覚症状からだけではがんかどうか判別できないため、気になる症状がある場合は内科や消化器内科などの医療機関を受診することが大切です。
胃がんの主な症状
- 胃(みぞおち)の痛み
- 胃の不快感・違和感
- おなかの張り
- げっぷ・胸やけ
- 吐き気
- 食欲不振・体重減少
- 血便(黒色便)
- 貧血によるめまい・ふらつき
胃がんを早期発見するための検診・検査
胃がんには特有の初期症状がないことから、早期発見のためには定期的にがん検診を受けることが重要です。国の指針にもとづいて実施される胃がん検診では、胃内視鏡検査(胃カメラ)か胃部X線検査(バリウム検査)のいずれかを実施します。
胃がん検診は対象年齢の人なら一部の自己負担金ですみ、名古屋市ではワンコイン500円の自己負担金で受けられます。当クリニックでも受診いただくことが可能です。
胃内視鏡検査や胃部X線検査のように胃の状態を視覚的に確認する検査のほか、採血で胃がんのリスクを判定する検査もあります。この検査を、胃がんリスク層別化検査(ABC検査)といいます。ABC検査は胃がんそのものを見つける検査ではなく、ピロリ菌感染の有無と胃粘膜の萎縮度を調べ、胃がんにかかるリスクを判定する検査です。
名古屋市ではABC検査に対する助成制度があるため、20歳以上39歳以下の方は自己負担金が無料で検査を受けることができます。当クリニックでも受診いただくことが可能です。
胃がんは早期発見・早期治療によって治る可能性が高いがんです[※2]。当クリニックのオリジナル人間ドックコースでは、どのコースをお選びいただいても胃内視鏡検査、胃部X線検査、ABC検査によって胃がんをはじめとする胃の病気の有無をしっかりチェックできます。また、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)がセットになった消化器ドックやオプション検査もご用意しております。
人間ドックのコースや検査内容について詳しくお知りになりたい方は、ぜひお気軽に当クリニックにお問い合わせください。
参考文献
- (※1)国立がん研究センター, がん情報サービス 最新がん統計
- (※2)国立がん研究センター, がん情報サービス がん種別統計情報 胃
- (※3)国立がん研究センター, がん対策研究所予防関連プロジェクト ヘリコバクター・ピロリ菌感染と胃がん罹患との関係:CagAおよびペプシノーゲンとの組み合わせによるリスク
- (※4)国立がん研究センター, がん情報サービス 胃がん
人間ドックコース・料金
当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
どのコースを受けたら良いかわからない場合は、お気軽にご相談ください。
記事監修
白木 茂博
ミッドタウンクリニック名駅 院長
1979年名古屋市立大学医学部卒業。
同第一内科に入局、関連病院で勤務ののち、中日病院健診センター長、院長、顧問を経て、現職。
日本内科学会専門医/日本消化管学会専門医/日本消化器病学会専門医/日本肝臓学会専門医/人間ドック健診専門医/日本消化器内視鏡学会名誉指導医/日本超音波医学会指導医/博士(医学)