歯周病が引き起こす全身の病気とは?糖尿病・心疾患・脳卒中へのリスクと予防法を解説

「歯周病は歯のトラブル」と思っていませんか?
近年の研究から、歯周病と糖尿病・心疾患・脳卒中など全身の病気との間に深い関連があることが分かってきています。しかも40代以上では自覚症状のないまま歯周病が進行しているケースが多く、特に生活習慣病と重なると身体への影響がより大きくなることが報告されています。歯周病が全身に影響するしくみや関連する代表的な病気、今日から始められる予防法まで解説します。
【 この記事のポイント 】
・歯周病の細菌や炎症物質が、血流を通じて全身へどう影響かが分かります。
・糖尿病・心疾患・脳卒中・骨粗しょう症など、歯周病との関連が指摘される主な病気が分かります。
・40代以上の歯周病有病のリスクと、見逃しやすい自覚症状のサインが分かります。
・毎日のセルフケアから生活習慣の見直しまで、予防のために今できることが分かります。
目次
歯周病とは?―口の中だけではない、全身に広がる炎症のしくみ
歯周病とは、歯と歯ぐき(歯肉)の間にたまった細菌が引き起こす炎症性の病気です。初期段階は「歯肉炎」として歯ぐきに炎症が起こり、放置すると歯を支える骨(歯槽骨:しそうこつ)が溶け始める「歯周炎」へと進行します。重症化すると歯が抜け落ちることもあり、日本人が歯を失う原因の第1位ともいわれています(※1)。
では、なぜ「口の中の病気」が全身と関係するのでしょうか。その主なルートは2つあります。
歯周病菌・毒素が血流を通じて全身へ広がる
歯周病が進行した歯ぐきには細かい傷ができており、そこから歯周病菌や歯周病菌の産生物質が血管内に入り込むことがあります。菌や毒素は、血流に乗って心臓・血管壁・腎臓など全身の各所へ届き、炎症を引き起こしたり血管壁に付着したりすることが報告されています(※2)。
炎症物質(サイトカイン)が全身の炎症を悪化させる
歯周病が進行した患部では、体が細菌から身を守ろうとして、炎症を引き起こす物質(炎症性物質)が大量につくられます。これらの物質が血液を通じて全身に運ばれると、体のあちこちで慢性的な炎症が起きたり、血糖値を調整するホルモンであるインスリンの働きが妨げられたりすることが分かっています(※2)。
歯周病が影響を与えるとされる全身の病気

歯周病と全身疾患の関連は、さまざまな病気で報告されています。代表的なものを以下の表にまとめます。
| 病気 | 歯周病との主な関連 |
|---|---|
| 糖尿病 | 歯周病の炎症によってインスリンが効きにくくなると、血糖値が上がりやすくなります。一方、糖尿病で血糖値が高い状態が続くと免疫の働きが低下し、歯周病が悪化しやすくなります。このように、歯周病と糖尿病はお互いに悪化させ合う「双方向の関係」にあることが知られています(※3) |
| 心疾患・動脈硬化 | 歯周病菌や炎症物質が血管の壁に作用し、動脈硬化を促進するとされています。歯周炎があると冠動脈性心疾患に罹患する割合が有意に高いとの報告があります(※2) |
| 脳卒中 | 動脈硬化が進行することによって、脳卒中リスクの上昇にも関係すると指摘されています |
| 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん) | 口腔内の細菌が誤って気管・肺に入ることで起こる肺炎。歯周病菌も原因菌の一つとされており、特に高齢者でリスクが高まります |
| 骨粗しょう症 | 骨粗しょう症になると歯槽骨の密度が低下し、歯周病が進行しやすくなります。また歯周病で歯を失うと、咀嚼(そしゃく)機能を低下させ、骨密度のさらなる低下につながる悪循環も報告されています(※2) |
| 早産・低体重児出産 | 歯周病の炎症物質が子宮収縮を促す物質の産生に関与し、早産・低体重児出産リスクとの関連が報告されています(※2) |
| 腎臓病 | 慢性腎臓病(CKD)との関連を示す研究報告も増えています(※2) |
上記はいずれも「関連が指摘されている・リスクの上昇が報告されている」段階であり、歯周病が直接これらの病気を引き起こすと断定されているわけではありません。ただし、複数の生活習慣病リスクを抱えている方ほど、身体への影響が重なりやすいことを念頭に置いておくことが大切です。
実は多くの方が当てはまる―歯周病の有病率と見逃しやすいサイン
厚生労働省の「令和4年(2022年)歯科疾患実態調査」によると、4mm以上の歯周ポケット(歯周病が疑われる状態)を持つ人の割合は全体で約47.9%にのぼり、45歳以上では2人に1人以上が該当することが報告されています(※4)。年代が上がるほど有病率は上昇するため、40代を過ぎたら特に注意が必要です。
このように、歯周病は多くの人にとって注意が必要な病気であるにもかかわらず、「サイレントディジーズ(沈黙の病気)」ともよばれ、初期〜中期には痛みがほとんど現れません。そのため、以下のような症状が気になる方は、歯科への受診をご検討ください。
- 歯磨きやデンタルフロスを使ったときに歯ぐきから血が出る
- 歯ぐきが赤く腫れている、または以前より下がった気がする(歯が長く見える)
- 口臭が気になる
- 硬いものを噛むと痛みや違和感がある
- 歯がぐらつく感じがある
これらの症状がなくても、長期間歯科を受診していない方は一度検診を受けることをお勧めします。
健診と一緒に「歯周病リスク検査」を
また、当クリニックでは、健康診断・人間ドックのオプションとして、唾液検査での「歯周病リスク検査」がございます。この検査では、唾液中のヘモグロビンや乳酸脱水水素酵素を測定し、歯肉の出血と細胞の炎症から歯周病のリスクを調べます。
歯周病の予防のためにできること

歯周病は、日々のセルフケアと生活習慣の見直しによって予防・進行抑制が可能な病気です。
毎日のセルフケア
- 1日2回以上、特に就寝前は丁寧に歯を磨く
- 歯と歯ぐきの境目(歯肉溝)を意識したブラッシングを行う
- デンタルフロスなどで歯と歯の間の汚れも落とす(順番は歯磨きの前にフロス)
- 舌や口腔粘膜もケアし、口腔内全体を清潔に保つ
生活習慣の見直し
- 【禁煙】喫煙は歯周病の主要なリスク因子の一つです(※5)。禁煙することで歯周病の進行を大幅に抑えられます
- 【血糖コントロール】糖尿病や血糖値が高い方は、良好な血糖管理が歯周病の予防にもつながります
- バランスのよい食事と十分な睡眠で免疫機能を維持する
定期的な歯科検診
セルフケアだけでは除去しきれない歯垢(プラーク)や歯石の蓄積が歯周病の大きな原因となります。3〜6か月に一度の歯科検診とあわせて、歯科医師や歯科衛生士が専用の機器とフッ素入りペーストを用いて行うプロフェッショナルクリーニングを受けることが推奨されています(※5)。
歯周病は予防できる―口腔ケアが全身の健康を守る第一歩に
歯周病は口の中だけの病気ではなく、糖尿病・心疾患・脳卒中・誤嚥性肺炎・骨粗しょう症など全身の病気との関連が多く報告されています。日本人の約半数が歯周病の疑いがある状態にもかかわらず、初期には自覚症状がほとんどないため、知らないうちに進行しているケースが少なくありません。毎日のブラッシングや歯科の定期検診はもちろん、全身の健康状態を人間ドックで定期的に把握することも大切です。
ミッドタウンクリニック名駅では、糖尿病・心疾患・脳血管疾患など歯周病との関連が深い生活習慣病の検査に対応した多様な人間ドックコースをご用意しています。歯周病が気になる方、生活習慣病リスクが心配な方は、ぜひお気軽にご相談ください。
歯周病のよくある質問
歯周病について、よくある質問にお答えします。
Q. 歯周病は完全に治りますか?
A. 適切な治療とセルフケアの継続によって症状を改善し、進行を止めることは可能です。ただし、一度歯槽骨が溶けると、基本的には元の状態に戻りにくいため、早期発見・早期対応が重要です。「悪化させないこと」が最大の目標になります。
Q. 血糖値が高いと歯周病になりやすいのですか?
A. 糖尿病などで血糖値が高い状態が続くと免疫機能が低下し、歯周病菌が繁殖しやすくなり、結果歯周病が進行しやすくなります。また歯周病の炎症物質が血糖コントロールをさらに悪化させることも分かっており、両者は相互に影響し合う関係にあります。血糖値が気になる方は、血糖管理と口腔ケアを並行して行うことが大切です。
Q. 人間ドックで歯周病と全身疾患の関係を調べることはできますか?
A. 人間ドックに歯科検査は通常含まれていませんが、歯周病との関連が深い糖尿病(血糖値・HbA1c)、脂質異常症(コレステロール値)、心臓・血管の状態は人間ドックで確認できます。歯周病のリスクが高まる年代の方は、歯科受診と並行して人間ドックで全身状態を定期的にチェックすることをお勧めします。当クリニックでは、人間ドックのオプション追加で「歯周病リスク検査」も可能です。
ただいま、ミッドタウンクリニック名駅では、「人間ドック夏のご優待コース」をご用意しています。
今回は、心疾患リスクをお調べする「心臓CT検査」や、腸内環境を見える化できる「腸内フローラ検査」付きのコースが多数ございます。
ぜひ、体調を崩しやすいこの季節に、あなたの健康状態を見直してみませんか?
参考文献
人間ドックコース・料金

当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
どのコースを受けたら良いかわからない場合は、お気軽にご相談ください。

記事監修
森山 紀之
医療法人社団進興会 理事長
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。










