コラム

Colum

心電図では分からない心筋梗塞の予防のために。冠動脈の石灰化を調べる検査とは?

公開日:2026.08.27

冠動脈の“石灰化”って何?

日本人の死因の第2位を占める心疾患(※1)。心疾患には心不全や狭心症、心筋梗塞などの病気がありますが、中でも心筋梗塞はひとたび発症すると約40%という高い確率で命を落とす重大な病気であり(※2)、予防が非常に大切です。近年、心筋梗塞の予防に役立つ検査として、冠動脈(心臓の表面に広がる血管)の石灰化を調べる「心臓CT検査」が注目を集めています。
今回は、冠動脈石灰化がもたらすリスクや心臓CT検査の意義について詳しく解説します。

【 この記事のポイント 】
・冠動脈の石灰化とはどのような状態で、なぜ危険なのかが分かります。
・心臓CT検査を用いた冠動脈石灰化スコアと心筋梗塞リスクが確認できます。
・心臓CT検査はなぜ心筋梗塞の予防に役立つのか、どんな人におすすめなのかが分かります。

冠動脈の“石灰化”って何?

からだの組織にリン酸カルシウムが沈着することを「石灰化」といいます。石灰化は骨や歯などの硬い組織を作るために必要な生理現象ですが、血管や関節、筋肉などの軟らかい組織にまで石灰化が起こることがあります。こうした病的な石灰化を「異所性(いしょせい)石灰化」といいます。

異所性石灰化のうち、特に重大な問題となるのが冠動脈に起こる石灰化です。石灰化が起こると、血管が本来持っている弾力性や柔軟性が低下し、硬くもろくなってしまいます。冠動脈は、血液を通して心臓の筋肉に酸素や栄養を供給する重要な血管です。この血管が石灰化すると、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症につながります。

血管の壁は外膜・中膜・内膜からなる3層構造をしており、カルシウムの沈着は中膜や内膜に起こります。中膜石灰化は高齢者や糖尿病の持病のある人に多くみられ、血管が硬くなることで血圧が上昇し、心臓の働きが悪くなる要因になります。一方、内膜石灰化は動脈硬化の進行に伴ってプラーク(脂質が蓄積してできる塊)の中にカルシウムが溜まっていくものです。冠動脈の内膜石灰化は血液の流れを悪くしたり、プラークの部分が破れたりすることで、狭心症や心筋梗塞の原因となります(※3)。

冠動脈の石灰化が進行して血管が硬く、もろくなったとしても、初期の段階では自覚症状はほとんど現れません。海外の医学誌に掲載された調査研究では、症状がない日本人男性760人(平均年齢63.8歳)を対象に調べたところ、63.2%の方に冠動脈石灰化があったと報告されています(※4)。冠動脈石灰化の主なリスク因子として、加齢、男性、高血圧、糖尿病などがあり(※5)、これらのリスク因子を持つ人は特に注意が必要です。

心臓CT検査を用いた「冠動脈石灰化スコア」とは

心臓CT検査を用いた「冠動脈石灰化スコア」とは

冠動脈石灰化の進行度合いを表す指標に、「冠動脈石灰化スコア(coronary artery calcium score:CACスコア)」があります。これは、心臓CT検査で冠動脈に沈着しているカルシウムの量を測定し数値化したもので、狭心症や心筋梗塞のリスクを評価するために用いられます。

冠動脈石灰化スコアの算出方法はいくつかありますが、一般的に用いられているのがアガストンスコアです。基準値区分として、「0:石灰化なし」「1~10:ごく軽度」「11~100:軽度石灰化」「101~400:中等度石灰化」「401以上:高度石灰化」の5分類があり、1000以上を「非常に高度な石灰化」と定義することもあります(※6)。

「冠動脈石灰化スコアの基準区分とリスク(※6)」

スコア 冠動脈石灰化 冠動脈疾患のリスク
0 なし 動脈硬化による狭心症・心筋梗塞の発症リスクは非常に低い。ただ、冠動脈疾患がないという意味ではなく、冠動脈の狭窄を完全に否定できるわけではない
1~10 ごく軽度 スコア0よりもリスクが高く、非石灰化プラーク量も多い
11~100 軽度 リスクが上昇し、特に糖尿病などの持病がある人では冠動脈疾患の発症に注意する必要がある
101~400 中等度 将来、冠動脈疾患を発症するリスクが高く、心臓突然死の発生リスクも「スコア0」の2.8倍高い(※7)
401以上 高度 冠動脈に狭窄がある確率が高く、冠動脈疾患の発症を防ぐための管理が重要。特にスコアが1000以上の場合は一段高い「超高リスク群」に分類される

当クリニックのスコア区分は下記の通りです。
スコア数の結果をふまえて、検査結果をリスクとあわせてお伝えいたします。

当クリニックでの「冠動脈石灰化スコアの基準区分とリスク」

スコア/冠動脈石灰化 冠動脈疾患のリスク
冠動脈石灰化スコア(CASA)0
非常に低い
冠動脈疾患のリスクは低いと考えられます。引き続きご自身の健康維持に努めてください
冠動脈石灰化スコア(CASA)1‐99
低い〜中程度
冠動脈に石灰化の蓄積を認めます。動脈硬化の初期兆候と考えられますので、生活習慣の改善に努めてください
冠動脈石灰化スコア(CASA)100以上
比較的高い〜高い
冠動脈に石灰化の蓄積を認めます。循環器内科をご受診ください

冠動脈石灰化スコアは、動脈硬化による狭心症・心筋梗塞の発症リスクを予測する方法として世界的に使用されている指標です。日本のガイドラインにおいては、日本人を対象とするエビデンスが十分ではないとして予防への活かし方は明記されていませんが、アメリカやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでは、狭心症・心筋梗塞の発症予防に活かすために冠動脈石灰化スコアを測定することが診療ガイドラインに盛り込まれています。

2026年3月には、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)による「脂質異常症の管理に関するガイドライン」が8年ぶりに改訂され、動脈硬化による狭心症・心筋梗塞の発症リスクがやや高い人に対して薬物治療を開始するかどうかを判断する際に、冠動脈石灰化スコアを評価することが推奨されるようになりました。さらに、冠動脈石灰化スコアに応じてLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の治療目標値を設定するという新たな推奨事項も盛り込まれ、これまでと比べて冠動脈石灰化スコアのより積極的な活用が明確化されたかたちです(※8)。

世界的に権威のあるACC/AHAのガイドラインでの推奨レベルが上がったことで、冠動脈石灰化スコアを用いた狭心症・心筋梗塞の予防は、今後日本でもスタンダードになっていく可能性があります。

心臓CT検査で狭心症・心筋梗塞の予防を

心臓CT検査で狭心症・心筋梗塞の予防を

心疾患による死亡数はがんに次いで多いにも関わらず、狭心症・心筋梗塞のリスクを知るための検診は、がん検診と比べるとそれほど普及していません。多くの人が受けている心電図検査では冠動脈の動脈硬化や石灰化を直接調べることはできないため、「心電図で異常がないから大丈夫」とは言えないのです。

心筋梗塞は突然死の原因の多くを占める病気ですが、予防することは可能です。心筋梗塞のリスクについて明らかにした「INTERHEART研究」という大規模研究では、高血圧、糖尿病、脂質異常症、内臓脂肪の増大、喫煙、不適切な飲酒、不適切な食習慣、運動不足、ストレスの9つの因子で心筋梗塞の発症の約90%を説明できると報告しています(※9)。つまり、日頃の生活習慣を見直してこれらのリスク因子を改善していけば、心筋梗塞を防ぐことができると考えられています。

冠動脈の動脈硬化や石灰化は自覚症状なく進行することがあります。特に40代以降で、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙歴、肥満がある方や、家族に若くして心筋梗塞や狭心症を発症した方がいる場合は、一度心臓CT検査を受けて、自分の冠動脈の状態を把握しておくことをおすすめします。検査結果は「冠動脈石灰化スコア」という数値で示されるので、狭心症・心筋梗塞のリスクをより具体的に知ることができ、生活習慣の見直しや今後の予防につなげることができます。

心臓CT検査がおすすめの人は?—リスク因子がある方は早めの受診を

以下のような方は心臓CT検査の受診を検討しましょう。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの持病がある方は、特に検査を受けることをおすすめします。

心臓CT検査(冠動脈石灰化スコア)はこんな方におすすめ

  • 45歳以上
  • 高血圧がある
  • 脂質異常症がある
  • 糖尿病を患っているまたは疑いがある
  • 肥満気味またはメタボリックシンドロームと診断された
  • 喫煙習慣がある
  • 血縁者に狭心症・心筋梗塞の人がいる
  • 心臓の健康が気になる

日本動脈硬化学会のガイドラインによると、脂質異常症のうち、遺伝が関係する「家族性高コレステロール血症」の患者さんは生まれつきLDLコレステロールが高くなりやすく、狭心症・心筋梗塞の発症リスクは健康な人の10倍以上も高いことが分かっています(※10)。できるだけ早い段階からコレステロールを下げる治療を行うことが重要ですが、病気に気づかず、適切な診断・治療を受けていない人は多いと考えられます。

家族性高コレステロール血症を早期発見するには、定期的に健康診断を受けてLDLコレステロール値をチェックすることが大切です。生活習慣を改善してもLDLコレステロール値が高いまま下がらないようなら、できるだけ早めに循環器内科を受診し、心臓CT検査の実施も検討するとよいでしょう。

ミッドタウンクリニック名駅では、各種人間ドック・健康診断のオプションとして心臓CT検査(冠動脈石灰化スコア)を受けることが可能です(男性のみ)。また、心電図のデータをAIで解析することで将来の心疾患のリスクを把握する「心臓年齢検査」という新しい心臓の検査もご用意しております。どの検査を受ければいいか迷われる場合は、ぜひお気軽にお問合せください。

 

心臓CT検査(冠動脈石灰化スコア)のよくある質問

心臓CT検査(冠動脈石灰化スコア)について、よくある質問にお答えします。

Q. 心電図検査は心臓CT検査の代わりになりますか?
A. 心電図検査は冠動脈の石灰化や狭窄などを直接評価できる検査ではないため、心臓CT検査の代わりにはなりません。心電図検査は低コストで行え、実施できる医療機関も多いため、心臓の異常を幅広くスクリーニングする検査手法としては有用です。ただ、冠動脈の動脈硬化がどのくらい進んでいるか、将来狭心症や心筋梗塞を発症するリスクがどのくらい高いかを調べるには、心臓CT検査を受けることをおすすめします。

Q. 心臓CT検査(冠動脈石灰化スコア)の流れを教えてください。
A. 冠動脈石灰化スコアを調べるには、心臓CT検査を行い、冠動脈に沈着しているカルシウムの量を測定する必要があります。心臓は休みなく拍動している臓器なので、CT撮影は心電図で心臓の動きを確認しながら、タイミングを合わせて行います。検査台に仰向けで寝た状態で胸に心電図測定用の電極を貼り、指示にしたがって息を止めた状態で撮影を行います。造影剤は使用せず、検査時間は5~10分程度です。
【注】ペースメーカー、ICD、冠動脈ステントを留置されている方は対象外となります。

Q. 冠動脈石灰化スコアがいくつ以上になったら治療をするべきですか?
A. 日本のガイドラインでは、治療を開始するべき値は明確化されていません。一方、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインでは、男性40歳以上・女性45歳以上で冠動脈石灰化スコアが100を超えている場合はLDLコレステロールを下げる治療を開始することを推奨しています(※8)。動脈硬化による狭心症・心筋梗塞の発症には、年齢や性別、生活習慣病の有無、喫煙習慣、遺伝的要因などの様々な要素が関係するため、治療方針や治療目標については医師とよく相談して決めることが大切です。

 

ただいま、ミッドタウンクリニック名駅では、「人間ドック午後のご優待コース」をご用意しています。
午後ドックは、午前中の受診よりも比較的スムーズに検査を受けていただけます。
午後の時間を有効活用して、ご自身の体のために人間ドックを受けてみませんか?

 

人間ドックコース・料金

当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
どのコースを受けたら良いかわからない場合は、お気軽にご相談ください。

森山 紀之

医療法人社団進興会 理事長

1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

おすすめ情報

Recommended information

ご予約・お問い合わせContact

人間ドック・健康診断
完全予約制

052-551-1169月~金 9時~17時(祝日除く)

当院では音声ガイダンスを導入しています。
予約に関するお電話は『1』、外来に関するお電話は『2』、企業検診ご担当の方は『3』を押してください。

ご質問などは、以下お問い合わせフォームよりお願いいたします。

お問い合わせフォーム

ページの一番上へ

閉じる