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知っておきたい動脈硬化のコト―精密検査と予防法

2022.12.16

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高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病と深く関係している動脈硬化。動脈硬化は自覚症状のないまま進行し、命に関わる重大な病気を引き起こす要因になります。今回は、動脈硬化が進行するしくみや、日常生活で実践できる予防法、早期発見に役立つ精密検査などについて詳しく解説します。

 

動脈硬化とは、どんな状態?

動脈硬化とは、文字通り動脈が硬くなり弾力性が失われた状態を指します。動脈は、心臓から送り出される血液を全身に運び、酸素や栄養を行きわたらせる役割を担っている血管です。心臓からは血液が勢いよく押し出されるため、その圧力に耐えられるように動脈は3層構造の動脈壁でできており、しなやかで伸縮性があります。

しかし、血圧が高い状態が続くと血管が次第に厚くなり、硬くなってしまいます。また、脂質異常症などの代謝異常があると動脈の内膜にLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が蓄積し、プラークと呼ばれるコブのようなものができます。このようなプラークも動脈硬化を引き起こす原因となります。プラークができることで起こる動脈硬化を粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)といいます。

 

アテローム動脈硬化は、脂質異常症のほかに糖尿病や高血圧、喫煙、肥満などのさまざまな危険因子が重なることで起こると考えられています。なお、それぞれの危険因子については下記の記事で詳しく解説しています。

●動脈硬化の最大の原因といわれる、脂質異常症とは
●高血圧の診断基準とは?知っておきたい高血圧のキホン
●糖尿病とは?―発症のしくみ、症状から予防法まで

 

動脈硬化が引き起こす重大な病気とは

動脈硬化が進行すると、やがて命を脅かす病気を発症するおそれがあります。たとえば、心臓に血液を送る冠動脈にプラークができ、それが大きくなって血管が狭くなったり、血栓ができて詰まったりすると、狭心症や心筋梗塞を引き起こします。また、脳内の太い動脈や頸動脈にプラークができると脳梗塞の原因になります。

日本人の死因の第1位はがんですが、動脈硬化が原因とされる心疾患は第2位、脳血管疾患は第4位となっており(※1)、動脈硬化性疾患はがんと同じくらい重大な病気と言えます。恐ろしいことに、動脈硬化は進行しても自覚症状が現れず、知らず知らずのうちに心疾患や脳血管疾患を発症していることも少なくありません。

こうしたことから、動脈硬化は「いかに進行させないか」に目を向けることが重要です。高血圧や脂質異常症、糖尿病といった動脈硬化の危険因子の有無を知るために、健康診断は定期的に受けるようにしましょう。なお、脂質異常症を調べる脂質検査については「脂質検査の結果の見方-コレステロール、中性脂肪の値を改善するには?」で詳しく紹介しています。

 

日常生活で実践したい動脈硬化の予防法

動脈硬化を予防するには、動脈硬化のリスクを高める生活習慣を改めることが大切です。喫煙は動脈硬化性疾患のリスクを高めることが分かっているため、禁煙に努めるようにしましょう。また、多量の飲酒は脳卒中のリスクを高めることから、アルコールは1日25g以下(ビール中瓶1本まで/日本酒1合まで)にすることが推奨されます。

適度な運動とバランスのよい食事も、動脈硬化の予防には重要です。運動は、ややきついと感じる強度の有酸素運動(ウォーキング、水泳など)を毎日30分以上行うと効果的だといわれています。食事に関しては、脂質が少なく食物繊維の多い伝統的な日本食がよいとされています。日本動脈硬化学会は、動脈硬化予防に役立つ食事として、減塩した日本食パターンの食事を推奨しています。

動脈硬化性疾患を予防するための食事のコツ(※2)

  • ・肉の脂身や動物脂(ラード、バターなど)の過剰な摂取を控える
  • ・菓子類や果糖を多く含む清涼飲料は少なめにする
  • ・魚(特に青魚)を多くとる
  • ・野菜や海藻、きのこ、こんにゃく、大豆・大豆製品を多くとる
  • ・穀類は玄米や麦飯、全粒粉パンなどの食物繊維の多いものを選ぶ
  • ・甘味の少ない果物、乳製品は適度にとる
  • ・アルコールは1日25g(ビール中瓶1本/日本酒1合)以下にする

 

動脈硬化を調べるために行う精密検査

心疾患や脳血管疾患などの動脈硬化性疾患を予防するには、血管の状態を調べて動脈硬化の進行度をチェックすることも重要です。検査の方法は、頸動脈超音波(エコー)検査のように直接血管の形を調べる検査と、血圧脈波検査のように血管の機能を調べる検査の2種類があります。

■頸動脈エコー検査

首に超音波をあて、頸動脈の形を画像として映し出す検査です。動脈壁の厚さやプラークの大きさ、動脈の狭窄度(詰まり具合)などが分かります。

■血圧脈波検査

両上腕と両足首に血圧を測定するカフを付け、血圧と脈波を測定する検査です。上腕の血圧と足首の血圧を比較することで、動脈が狭くなっていないか、詰まっていないかを調べます。また、脈波が伝わる速度によって、動脈の硬さを評価します。

動脈硬化の進行度を調べる検査に加え、心疾患や脳血管疾患の疑いがないか調べることも大切です。健康診断の検査項目になっている心電図検査では、狭心症や心筋梗塞の疑いを調べられます。また、人間ドックなどで実施されるCTやMRIでは、より詳しく血管の詰まり具合を確認することが可能です。

当クリニックでは、各種健康診断・人間ドックのオプションとして頸動脈エコー検査、血圧脈波検査、頭部MRI・MRAを実施しております。生活習慣で思い当たることがある方や、動脈硬化のリスクが高いと指摘されたことがある方は、一度検査を受けてみてはいかがでしょうか。

 

【関連コラム】

心疾患の発見に役立つ心電図検査については、こちらのコラムで詳しく解説しています。

心電図の役割と異常が見つかった場合に行う精密検査

 

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参考文献
※1 厚生労働省:令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況.
※2 一般社団法人日本動脈硬化学会:The Japan Diet 動脈硬化を知る×動脈硬化を予防する食事

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alt=記事監修者:
医療法人社団 進興会 理事長 森山紀之

プロフィール:
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、
東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

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