「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」とはどんな病気?肺気腫との違いや症状・原因を解説
年間の死亡者数が約1万7千人にも上る「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」(※1)。COPDは、ゆっくりと進行するため見過ごされてしまうことも多い肺の病気ですが、早期に発見して、診断・治療を受ければ病気の進行を食い止めることができます。
今回は、COPDの原因や症状、早期発見のために受けておきたい検査について詳しく解説します。
COPDと肺気腫は、どう違う?
「COPD」とは、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)の略称で、タバコの煙を主とする有害物質を長期にわたって吸入することで発症する肺の病気です。空気の通り道である気道や気管支が狭くなる状態(閉塞)が続き、呼吸しにくくなるのがこの病気の特徴です。
こうした状態は、肺の中にある「肺胞」という小さな袋が炎症によって壊れたり、肺胞につながる細い気管支に炎症が起きて狭くなることで起こります。肺胞が壊れてスカスカになった状態は「肺気腫」と呼ばれ、気管・気管支が慢性的に炎症を起こして咳やたんが出る状態は「慢性気管支炎」と呼ばれます。
つまり、COPDは肺気腫や慢性気管支炎などを含む病気のことなのです。
ただし、注意したいのが「COPD=肺気腫・慢性気管支炎」というわけではないということです。COPDは「呼吸器機能検査で気道の閉塞が認められる病気」と定義されており、たとえ他の検査で肺気腫や慢性気管支炎が認められても、呼吸器機能検査で異常がなければ、COPDとは診断されません(※2)。適切な治療を受けるには、正しい診断が重要です。医療機関を受診する際は、COPDの診断に必要な検査を受けられる呼吸器内科などを受診することをおすすめします。
COPDの主な原因は喫煙
COPDの最大の原因は、タバコの煙です。タバコの煙には人体に有害な化学物質が200種類以上含まれており、それらを吸い込むことで気道や肺に慢性的な炎症が起こり、肺胞が破壊されていきます。自分でタバコを吸うだけでなく、受動喫煙の場合もCOPDのリスク因子です。
COPDを発症した人の約90%に喫煙歴があり、COPDによる死亡率は非喫煙者と比べて喫煙者のほうが約10倍高いといわれています(※2)。喫煙年数が長い人、1日に吸うタバコの本数が多い人ほど、COPDの発症リスクは高まります。
ただ、喫煙者が必ずしもCOPDを発症するわけではなく、COPDを発症する喫煙者の割合は15~20%程度です。COPDになりやすい喫煙者となりにくい喫煙者がいる理由として、タバコの煙に対する感受性を決める遺伝子が原因だと考えられています。
タバコの煙のほか、PM2.5や黄砂などの大気汚染物質や薪などの有機燃料を燃やした時の煙を吸い込むことも、COPDのリスク因子です。また、工事現場や工場などで発生する粉塵や化学物質への曝露(ばくろ)もCOPDのリスク因子であり、COPD患者の約15%が職場での曝露(ばくろ)が原因だといわれています(※2)。
COPDでは、どんな症状が現れる?
COPDの主な症状に、息切れや咳、痰などがあります。特に、息切れはCOPDの特徴的な症状です。早期の段階では階段や坂道を上る時に気づく程度ですが、呼吸機能が悪化すると同年代の人と同じ速さで歩くのが難しくなり、軽く体を動かしただけで息切れするようになります。さらに進行すると、着替えや洗顔などの日常動作を行うだけで息切れが現れるようになります。軽症の場合は自覚症状に乏しいこともあり、COPDであるにもかかわらず見過ごされている人は少なくありません。厚生労働省の患者調査によれば、診断を受けているCOPD患者は約22万人ですが、実際には40歳以上では、約530万人の人がCOPDにかかっていると見積もられています(※2,3)。
COPDは肺の病気であるとともに、全身の疾患でもあります。COPDがあると、筋力の低下や低栄養、心不全、骨粗鬆症、うつ病、糖尿病、貧血などの病気を併発しやすいといわれています。
また、COPDの患者さんは肺がんを合併しやすく、COPDでない喫煙者と比べて発症リスクが約3倍高いという報告もあります(※2)。
COPDを早期発見するために受けておきたい検査
一度壊れてしまった肺胞は、治療しても元に戻すことができないため、残念ながらCOPDの根本的な治療法はありません。だからこそ、肺の機能をできる限り保ち、COPDの発症を防ぐことがなにより重要です。COPDの最大の原因がタバコの煙であることから、喫煙をしている場合はできるだけ早く禁煙することをおすすめします。
もしCOPDを発症しても、早期に発見し治療を受ければ、症状を改善したり進行を遅らせたりすることができます。40歳以上で喫煙歴がある人は、一度チェックリストを活用してCOPDの疑いがないか確認してみましょう。
COPDを早期発見するための症状チェックリスト
- 風邪を引いていないのに、痰がからんで咳をすることが多い
- 走ったり、重い荷物を運んだときに、同年代の人と比べて息切れしやすい
- 走ったり、重い荷物を運んだときに、呼吸がゼーゼー・ヒューヒューすることが多い
- 風邪がなかなか治らない、風邪症状をくり返す
※1つでも当てはまる項目がある場合は、医療機関を受診して呼吸機能検査を受けてみましょう。
患者さんの多くは、COPDの発症後20~30年程度の期間を経て、息切れが現れるレベルまで症状が進行してから初めて医療機関を受診しています。また、COPDの症状は風邪を引いた時に悪化することがあり、「咳や痰などの風邪症状が強い」「風邪が治りにくい」という理由で医療機関を受診したことがきっかけでCOPDが見つかることもあります。
人間ドックや肺がん検診などで受ける胸部CT検査がきっかけで、COPDが発見されることも少なくありません。喫煙歴が長い方や受動喫煙による影響が気になる方は、たとえ自覚症状がなくても一度肺機能検査を含む人間ドックまたは胸部CT検査(オプション検査)の受診を検討してみるとよいでしょう。
当クリニックでは、健康診断や人間ドックのオプション検査として低線量胸部マルチスライスCT検査を実施しております。COPDや肺がんの発見に有用な検査ですので、気になる方はぜひお気軽にお問合せください。
ただいまミッドタウンクリニック名駅では「夏の人間ドックご優待コース」をご用意しています。
ご興味ある方はぜひ当クリニックにお問い合わせください。
参考文献
- (※1)厚生労働省, 令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況
- (※2)日本呼吸器学会, COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022
- (※3)厚生労働省, 令和5年(2023)患者調査の概況
人間ドックコース・料金

当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
どのコースを受けたら良いかわからない場合は、お気軽にご相談ください。

記事監修
森山 紀之
医療法人社団進興会 理事長
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。