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便潜血検査で陽性と判定されたら、どうすればいい?

2024.02.28

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便潜血検査の画像

健康診断や人間ドックの一環として行われることの多い便潜血(べんせんけつ)検査。その名の通り、便の中に血液が混じっていないかを確認する検査です。今回は便潜血検査で分かることや、検査結果が「陽性」となった場合に受けるべき精密検査について、詳しく解説します。

便潜血検査の検査方法とわかること

便潜血検査は、潰瘍やポリープ、がんなど、消化管からの出血が起こりやすい病気が疑われるときや、症状がない段階での早期発見のために行う検査です。ポリープやがんなどが消化管の中にできると、便が腸内を動くときに組織がこすれて出血を起こすことがあります。出血量が多ければ排便時に気づくことができますが、多くは微量のため目で確認することはできません。便潜血検査では、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンという色素を検出するため、目視では分からない微量の出血も見つけることができます。

便潜血検査は大腸がんの発見に役立つ検査であり、毎年受けることで大腸がんによる死亡が60%減ることが科学的に明らかになっています。こうしたことから、便潜血検査は国の指針に基づいて実施される大腸がん検診の検査法となっており、40歳以上の人は毎年1回、定期的に受診することが推奨されています。

ほとんどの市区町村ではがん検診の費用の多くが公費でまかなわれているため、一部の自己負担金で検査を受けられます。名古屋市ではワンコイン500円の自己負担金で大腸がん検診を実施しており、当クリニックでも受診いただけます。

■名古屋市大腸がん検診についてはこちら■

検査の方法には、1日分の便を採取する1日法と2日分を採取する2日法がありますが、大腸がん検診では2日法が一般的です。常に出血が起こっているとは限らないため、数回に分けて便を採取するほうが精度が高まるためです。大腸がんの検出率は進行がんの方で60~75%程度、早期がんの方で30~40%程度といわれていますが、2日法で行うことで、これらの検出率が10~15%程度高まるとされています。

血液は便の中に均等に混じっているわけではないので、便潜血検査で便を採取する際は採便スティックで便の表面を広くまんべんなく擦り取るようにします。採取した便は、室温で放置すると、赤血球中のヘモグロビンが腸内細菌によって分解されてしまい、出血があっても陰性と判定されるおそれがあります。そのため、便は提出日の当日、前日、前々日の3日間のうちから2回(2日間)採取するようにし、採取した便は冷蔵もしくは25℃以下の冷暗所で保管することが大切です。

便潜血検査のメリットとデメリット

便潜血検査のメリットとデメリット

便潜血検査には、検査前に食事や内服薬を制限する必要がなく、便を採取するだけで簡単に行えるというメリットがあります。自宅で検査できる上、検査に伴うリスクや副作用がないため、大腸の病気のスクリーニング検査として活用されています。

一方、出血の有無を検出する検査なので、生理や痔などで出血があった場合も陽性と判定されてしまう可能性がある点はデメリットといえます。陽性の判定が出た場合に、「排便時に肛門が切れてしまったせいだ」「もともと痔があったからそれが原因だろう」などと自己判断するのは禁物です。陽性判定が出たら病気を発見する機会だととらえ、必ずその後の精密検査を受けるようにしましょう。

便潜血検査は、精密検査が必要かどうかを判断するために有用ですが、検査で陰性と判定されたとしても、がんやポリープなどの病気が100%ないというわけではありません。本当は病気があるにもかかわらず陰性と判定されることを「偽陰性」といいますが、進行したがんであってもいつも出血しているわけではないので、偽陰性になることもあります。

検査結果が陰性でも気になる症状がある場合や、病気発見の精度をより高めたいという場合は、大腸内視鏡(大腸カメラ)検査などの他の検査も検討するのがおすすめです。

メリット デメリット
・自宅で検査でき、身体への負担が少ない
・検査に伴うリスクや副作用がない
・検査前の食事・内服薬の制限が不要
・大腸がんや潰瘍、ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病などの病気の発見につながる
・検査にかかる費用が比較的安価
・生理や痔などで出血があった場合、陽性反応が出てしまう
・採便するタイミングが決められているため、便秘や下痢ぎみの人では採便が難しいことがある
・病気があるにもかかわらず陰性と判定されることがある

便潜血検査で陽性と判定された場合に受けるべき検査

便潜血検査で陽性と判定された場合に受けるべき検査

便潜血検査の結果、陽性(要精密検査)と判定されたら必ず精密検査を受けることが大切です。大腸がんの場合、自覚症状があらわれないことが少なくないため、症状がないから大丈夫と考えるのは危険です。もともと痔がある場合でも、陽性となった原因が痔なのか他の病気なのかは精密検査をしないと分かりません。

精密検査では、大腸内視鏡検査や大腸CT検査を行うことが一般的です。大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡を挿入して腸の内部を直接観察する検査で、小さな病変や出血などを詳しく調べることができます。大腸CT検査は肛門から炭酸ガスを注入して大腸を膨らませ、X線で撮影する検査で、得られた画像をもとに診断を行います。

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いずれの検査も大腸がんやポリープなどの病気を高い精度で発見できる検査ですが、便潜血検査と比べると心身への負担が大きくなります。「苦しそう」「検査を受けるのが恥ずかしい」などの理由から、便潜血検査で陽性と判定されても精密検査を受けずに放置してしまう人も少なくないといわれています。

はじめから大腸内視鏡検査や大腸CT検査を受けるのは抵抗があるという方は、比較的簡便に大腸がんなどのリスクを調べられるコリバクチン検査や便中カルプロテクチン検査、高感度CRP検査を検討してみるのがおすすめです。便潜血検査にこうした検査を組み合わせることで、大腸の病気の見逃しリスクを低減させることが期待できます。

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気軽にできる大腸検査で大腸の病気の早期発見につなげよう!

当クリニックでは、大腸内視鏡検査や大腸CT検査のほか、コリバクチン検査・便中カルプロテクチン検査・高感度CRP検査をセットにした「大腸検査セット」をご提供しています。気になる症状がある方やまずは身体への負担が少ない検査を受けたいという方は、ぜひ当クリニックまでご相談ください。

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参考文献
※1. 国立がん研究センター, がん情報サービスがん対策情報 大腸がん検診
※2. 医学会新聞(医学書院)便潜血反応 化学的方法(グアヤック法,オルトトリジン法)/免疫学的方法(高木康)

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alt=記事監修者:
医療法人社団 進興会 理事長 森山紀之

プロフィール:
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、
東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

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