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くも膜下出血から命を守るには?―知っておきたい原因と前兆症状

公開日:2025.10.30

くも膜下出血とは、どんな病気?

脳卒中の一種である「くも膜下出血」。突然発症し、また発症すると死に至る割合が高く、命が助かっても重度の後遺症が残ることが少なくありません。そのため、くも膜下出血の発症をいかに防ぐか、早期発見するかが非常に重要です。今回は、くも膜下出血の原因や予防について詳しく解説します。

くも膜下出血とは、どんな病気?

くも膜下出血は、脳の表面にある血管が破れることで発症する脳卒中の一種です。私たちの脳は「硬膜」「くも膜」「軟膜」の3層の膜で守られています。
「くも膜」と「軟膜」の間には「くも膜下腔(くもまくかくう)」という空間があり、脳脊髄液で満たされていて、脳血管も走っています。くも膜下出血は、この「くも膜下腔」で出血が起こる病気です。

くも膜下出血とは、どんな病気?

脳卒中のうち、くも膜下出血が占める割合は約5%と多くはありませんが、日本は世界でも類を見ないほど高齢化が進んでいることもあり、アメリカやノルウェーなどの国と比べて、くも膜下出血の発生率が2倍以上高いことが知られています(※1)。

くも膜下出血は男女ともに30~40歳代から発症リスクが高まり、発症年齢の中央値は男性で61歳、女性で70歳です(※2)。発症は男性より女性に多く、男女比はおよそ1:2で、年齢が上がるにつれて男女差は大きくなる傾向があります。高齢の女性にくも膜下出血が多い理由として、女性ホルモンの減少が関係していると考えられています。今後人口の高齢化が進むにつれて、女性のくも膜下出血はさらに増える可能性があります。

くも膜下出血の死亡率はおよそ50%と非常に高く、命が助かった場合でも、重度の後遺症が残る場合が少なくありません(※3)。
それだけに、くも膜下出血は「いかに発症を防ぐか」が重要な病気なのです。

くも膜下出血の原因とリスクを高める生活習慣

くも膜下出血の原因の80~90%を占めるのが、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)の破裂です。脳動脈瘤とは脳血管にできる小さな風船のようなふくらみのことで、血管の壁が弱い、血管が枝分かれする部分にできやすい特徴があります。決して珍しいものではなく、日本人の約3%に脳動脈瘤があるといわれており、自覚症状はなく脳ドックなどで偶然発見されることも少なくありません。

くも膜下出血は家族歴が関係するといわれており、2親等以内にくも膜下出血を発症した人がいる場合、未破裂の脳動脈瘤が見つかる割合は約14%まで跳ね上がることが報告されています(※4)。

また、生活習慣もくも膜下出血の発症に関係しており、喫煙、高血圧、過度の飲酒はいずれも発症リスクを高めます。特に、1週間に純アルコール150g以上(例:ワイン2本以上、500mLビール8本以上)を摂取するような過度の飲酒は、危険度の高いリスク因子です。また、複数のリスク因子を抱えていると、発症リスクが跳ね上がることも分かっています。脳動脈瘤は予防が難しいからこそ、これらのリスク因子を1つでもなくせるよう、生活習慣の改善に努めることが大切です。

くも膜下出血の症状と注意すべき前兆症状

くも膜下出血を発症すると、脳や髄膜が刺激されて、突然の強烈な頭痛が起こります。今まで経験したことのないような痛みで、「ハンマーで殴られたよう」などと表現されることもあります。

また、脳動脈瘤が破裂すると頭蓋の中の圧力が急激に上昇し、嘔吐や意識障害、けいれんなどが現れます。この状態が長く続くと脳が大きなダメージを受け、意識が戻らない場合もあります。くも膜下出血は脳の表面で出血が起こるため、脳梗塞や脳出血でしばしば見られる片麻痺やしびれといった症状が出現することはほとんどないとされています。

くも膜下出血は突然発症する病気ですが、中には発症の数時間~数日前に前兆症状がみられることもあります。特に多いのが、偏頭痛のようなズキズキした痛みで、「警告頭痛」とも呼ばれます。これは、動脈瘤から少量の出血が起こって発生する頭痛と考えられており、危険なサインです。吐き気を伴うような頭痛が1~2日続く場合は、決して軽視せず、早めに医療機関を受診することが重要です。

そのほか、大きくなった動脈瘤が脳神経を圧迫すると、物が二重に見える、まぶたが下がる、視力や視野に異常が起こるなどの前兆症状が現れることもあります。これらの症状が急に現れた場合、動脈瘤が破裂する危険が差し迫っている可能性があるため注意が必要です。

脳ドックで「くも膜下出血」のリスクをチェックしよう!

脳ドックで「くも膜下出血」のリスクをチェックしよう!

医療技術が発展した現代でも、くも膜下出血は発症すると命に関わる危険な病気です。他の脳卒中に比べて、40~50歳代という比較的若い年齢で発症することが多いのも特徴です。(※2)一般的な健康診断では脳を調べることはないため、普段の健康診断で問題がないからといって油断は禁物です。

喫煙習慣のある人や飲酒の頻度や量が多い人、高血圧の方などは、まず生活習慣を見直すことが大切です。脂質や塩分の摂取量が多い人ほどくも膜下出血の発症リスクが高まることが分かっているため(※5)、それらの摂取を控え、抗酸化物質が豊富な野菜・果物や大豆食品を積極的に摂るようにしましょう。

また、くも膜下出血の主な原因は脳動脈瘤であることから、定期的に脳ドックを受診して異常がないか確かめることも重要です。未破裂の脳動脈瘤が見つかった場合、その大きさが5~7mm以上ある場合や、大きさが5mm未満でも脳動脈瘤の場所などにより、破裂のリスクが高いと判断される場合には治療が検討されます。すぐに治療の必要がないとされても、絶対に安全というわけではないため、定期的な検査が必要です。

当クリニックでは、脳の断面を調べる「頭部MRI検査」や脳の血管を詳しく映し出す「頭部MRA検査」などの検査を実施しています。「頭部MRA検査」は脳の動脈だけを映し出せるため、動脈瘤を発見するのに有効です。「頭部MRI・MRA」の検査を含む「ヘルスケア脳ドック」の受診はもちろん、各種人間ドックのオプションとしてご受診いただくことも可能です。

 

 

くも膜下出血の主な原因である脳動脈瘤は、日本人の30人に1人程度の頻度で見つかる病気であり、決して珍しいものではなく、また一般的に自覚症状もありません。だからこそ、2~3年に1度など定期的に「頭部MRI・MRA検査」を受けておくことが重要です。早期に発見し、適切に管理すれば、突然のくも膜下出血の発症を防ぐことができます。特に喫煙や飲酒習慣、高血圧などのリスク因子がある方は、年齢に関係なく早めの脳ドック受診をおすすめします。

参考文献

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森山 紀之

医療法人社団進興会 理事長

1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。

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