お酒好きじゃないのに脂肪肝に?原因、症状、早期発見のための検査

日本の肝臓病による死亡数は、年間約5万人に上ると推計されています(※1)。この多くが肝硬変や肝臓がんによるもので、その原因となっているのが「脂肪肝・脂肪肝炎」です。脂肪肝というとアルコールのイメージが強いかもしれませんが、近年注目されているのは非アルコール性(お酒以外による)の脂肪肝・脂肪肝炎です。今回は、特に「非アルコール性の脂肪肝・脂肪肝炎」に焦点を当てて、詳しく解説します。
目次
脂肪肝とはどんな病気?
「脂肪肝」とは、その名の通り、肝臓に脂肪が多くたまった状態を指します。医学的には、蓄積した脂肪の量が肝臓全体の重さの5%以上になっているものを脂肪肝と呼びます。
食事から摂取した糖質は、グリコーゲンという形に変えられて一時的に肝臓に蓄えられ、血糖値が下がるとエネルギー源として血中に放出されます。ただ、食べ過ぎや運動不足などのために食事で摂ったエネルギーが消費しきれず余ってしまうと、肝臓で中性脂肪に変えられ、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積されます。
脂肪は脂肪組織に蓄積するものであり、本来、肝臓に脂肪がたまることはありません。ただ、脂肪組織にため込める以上に中性脂肪が増えてしまうと、肝臓や心臓、骨格筋などの脂肪組織以外の場所に脂肪が蓄積するようになります。こうした脂肪を「異所性脂肪」と呼び、脂肪肝は異所性脂肪の代表的な存在です。
脂肪肝の原因として、長期間に渡ってのお酒の飲みすぎ(アルコール性の脂肪肝)が知られています。アルコールを大量に飲み続けるとアルコールを分解する過程で肝臓に負担がかかり、中性脂肪が合成されやすくなるため発症します。しかし近年、肥満人口の増加や食生活の欧米化に伴ってお酒以外の原因で起こる非アルコール性の脂肪肝が増加傾向にあります。
いずれのタイプでも、脂肪肝の状態でとどまっていれば健康への影響はそれほどありませんが、脂肪肝から脂肪肝炎へ進行すると、肝硬変や肝臓がんなどの重大な病気を発症するリスクが高まります。
非アルコール性の脂肪肝・脂肪肝炎が起こる原因

これまで、非アルコール性の脂肪肝から脂肪肝炎に進行した状態までを含む一連の肝臓病は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれていました。そのうち、病気がほとんど進行しないものは「非アルコール性脂肪肝(NAFL)」、炎症や肝細胞障害が見られるものは「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」に分類されていました。
2023年に病気の概念が見直され、NAFLDは「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」という病名に、NASHは「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」という病名に変更されることとなりました(※2)。MASLDの有病率は9~30%とされており、日本における患者数は1,000万人以上に上ると考えられています。
お酒をほとんど飲まない、あるいは全く飲まない人が脂肪肝・脂肪肝炎(MASLD/MASH)になる主な原因は、食べ過ぎや運動不足による肥満、糖尿病、高血圧などです。
特に肥満(ウエスト周囲径の増大)は強い危険因子と考えられており、男性の肥満者の増加が社会問題となる中で、非アルコール性の脂肪肝・脂肪肝炎(MASLD/MASH)の患者数が増えていることが懸念されています。一方で、非アルコール性の脂肪性肝疾患(MASLD)の発症や悪化には遺伝的な要因や腸内細菌などの生活習慣以外の要因も関係することが分かってきており、日本人の肥満ではない人のMASLDの有病率が約15%と欧米と比べて高い傾向にあります(※1)。肥満やメタボリックシンドロームでないから大丈夫とは言えないのです。

非アルコール性の脂肪肝・脂肪肝炎の主な症状
非アルコール性の脂肪性肝疾患(MASLD)の80~90%は、脂肪肝のまま、病気はほとんど進行しません。しかし、残りの10~20%の人は徐々に悪化し、肝硬変に進行したり、肝臓がんを発症したりすることもあります(※3)。
肝臓は“沈黙の臓器”といわれるように、肝臓に障害が起こっても、すぐに症状が現れるわけではありません。脂肪肝では自覚症状がないことがほとんどです。非アルコール性の脂肪肝・脂肪肝炎(MASLD/MASH)では倦怠感や睡眠障害が現れることもありますが、肝臓病に特有の症状ではないため、症状から病気を発見することは困難です(※1)。脂肪肝炎から肝硬変まで進行すると、白目が黄色くなる黄疸(おうだん)や腹水がたまることによる膨満感などの症状が現れることがあります。
また、MASLD/MASHは他の病気の発症・悪化に関わることが知られており、間接的に乾癬(かんせん)や骨粗しょう症、睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患、慢性腎不全などの症状が現れる場合があります。そのため、もしこれらの病気を急に発症したり、症状が悪化したりした場合は、肝障害の有無もチェックすることが大切です。
非アルコール性の脂肪肝・脂肪肝炎を早期発見するための検査

非アルコール性の脂肪性肝疾患(MASLD)は、下記の条件を満たす脂肪肝・脂肪肝炎と定義されています。
- 画像検査で脂肪肝が指摘され、肝生検で採取した組織を顕微鏡で調べた結果、肝臓に脂肪蓄積(肝細胞の5%以上)を認める(脂肪肝がある)
- 過度のアルコール摂取や薬物性肝障害、遺伝子疾患などの脂肪肝を引き起こす原因がない
MASLDを早期発見するには、血液検査や腹部超音波(エコー)検査が有用です。
血液検査
ALT(GPT)やAST(GOT)といった肝機能の数値を測定し、肝臓のダメージの程度を確認します。
腹部超音波(エコー)検査
お腹に超音波をあて、肝臓の脂肪の蓄積具合や肝臓の形を画像で直接確認します。白っぽく輝いて見えるほど、脂肪が多く溜まっていることを示します。
特に、健康診断や日常の診療で測定されることが多い「ALT(GPTともいう)値」は、肝臓の炎症やダメージを直接反映する指標であり、日本肝臓学会は健康診断などの結果でALTが30を超えていたら肝炎が進行している可能性があるため、かかりつけ医を受診するよう呼び掛けています(※4)。
腹部超音波検査で脂肪肝の疑いが指摘されたり、ALT値が30を超えている場合、医師に肝臓の硬さ(線維化)を評価してもらうことをお勧めします。肝臓の線維化は、MASLDの進行の程度を調べたり、肝硬変の程度を知る上で重要な指標です。線維化の進行の程度は、AST値やALT値、血小板数、年齢から計算するFIB-4 indexなどのスコアリングシステムで簡単に評価することができます。もし肝臓の線維化が進行している可能性がある場合は、専門の医療機関で詳しい検査を受けることが推奨されます。
MASLDの中でも、肝臓に炎症のある脂肪肝炎の患者さんでは、肝硬変や肝臓がんなどの肝臓病だけでなく、心血管疾患や他の臓器のがんなどのリスクが高まるため、一般の人と比べると死亡率が高いと考えられています。ただ、早期の段階で食生活の改善や適度な運動に努めたり、肥満の場合は適正体重を目指して減量すれば、脂肪肝・脂肪肝炎の状態を改善させることは可能です。だからこそ、炎症が進行する前の脂肪肝の段階で発見することが重要なのです。
当クリニックの健康診断・人間ドックでは、脂肪肝の早期発見に役立つ「肝機能検査(AST、ALT)」はもちろん、オプション検査として肝臓にたまった脂肪を調べられる「腹部超音波検査」もご用意しています。また、当クリニックでは健診後のアフターフォローとして、外来での診察も行っております。健診で脂肪肝の疑いが指摘された場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ただいま、ミッドタウンクリニック名駅では「人間ドック冬のご優待コース」をご用意しています。
「お腹の調子が気になる」「ダイエットがうまくいかない」「アレルギーがある」といった悩みを持つ方には特におすすめの「腸内フローラ検査」付きコースが多数ございます。
ぜひ、自身の腸内環境を知ることで健康維持や健康管理にお役立てください。
参考文献
- (※1)日本消火器病学会・日本肝臓学会, NAFLD/NASH診療ガイドライン2020
- (※2)日本消化器病学会, 脂肪性肝疾患の日本語病名に関して
- (※3)日本消火器病学会・日本肝臓学会, 患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド2023
- (※4)日本肝臓学会, 奈良宣言2023
人間ドックコース・料金

当クリニックでは皆さまのご要望に柔軟に対応できるよう、多様なコースをご用意しています。
どのコースを受けたら良いかわからない場合は、お気軽にご相談ください。

記事監修
森山 紀之
医療法人社団進興会 理事長
1973年千葉大学医学部卒。
元国立がん研究センター がん予防・検診研究センター センター長、東京ミッドタウンクリニック常務理事 兼 健診センター長を経て、現職。








